

日本人の女性からのわし鼻(ワシ鼻)のイメージは野暮ったい、気が強い、暗い、男っぽいなど、好イメージを与えるものではありません。女性の鼻の理想の形としては、真っ直ぐか、軽い弓なりの形でほっそりしたスジの通った鼻が 好まれてます。 ただ、江戸時代の浮世絵など見ますと、意外にわし鼻というか横から見て折れ曲がった鼻の女性が描かれていますから、美の基準に時代の変遷があるのでしょう。わし鼻の人に着物を着せて「和服美人」と言うのは、何となく理解できるものでもあります。 さて、インドや中近東の人たちの美意識は、わし鼻で大きめの鼻が美人の条件のようです。 平成6年くらいだったですが、日本美容外科学会の演題で「アフガニスタン人に行った鼻の手術について」等という題名の発表があり、日本人の美意識で手術をしてしまったら、アフガニスタンの患者さんからクレームが来た。という内容だったと記憶しています。
わし鼻では鼻根部(目と目の間)と鼻先が高くなれば鼻筋としては真っ直ぐに近づくので、骨の上にわし鼻部だけ薄くしたシリコンプロテーゼを置いて治療する事はあります。しかし、プロテーゼを置くということは、加えることですので、小さくもない鼻にそれを行うと、大きな鼻を作ってしまって真っ直ぐな鼻筋になっても、顔全体から見たら審美的に問題です。 これは適応を選んで行うべきで、わし鼻の程度の軽い小さめの鼻限定です。
片側の鼻孔内を切開し、わし鼻部また鼻骨部を骨膜下を剥離し、そこをヤスリで削る事は、素人っぽい発想です。しかし実際は、鼻骨の厚みが2mm足らずのため、骨がなくならない程度に削ると言う事は、ほとんど変わらない事を意味し、わし鼻の骨がなくなるまで削ってしまうことは、変形鼻とでも言える平らな鼻を作ってしまします。 従って、ほんの1mmだけの改善で良いならばやっても悪くないという手術です。 また鼻骨の幅の広い「広鼻」をもヤスリで削るようなことをすると、鼻骨左右の手術操作は結構出血しますので、術後に鼻がパンパンに腫れて、鼻がボールのようになるものです。その出血が多いと残った血腫が器質化し、また剥離部に結合組織の造成が生じたりして、反って若干、鼻骨部が術前より太くなる事があります。丁度、鼻尖縮小手術で、ろくに軟部組織も、軟骨も切除しなければ、鼻先が反って太くなってしまうのと似ています。
この手術は、鼻の穴の中、両側からアプローチしメス、ハサミ、ノミ、ノコギリ等でハンプ部(鼻骨、鼻中隔軟骨、外側鼻軟骨が接合)を落とし(摘出)ます。このままでは摘出部が平らになり鼻筋も太く見え不自然です。そのためさらに鼻骨基部の内外の側骨切りを行い、鼻骨を内側に寄(正中移動)させます。寄せた後、上顎骨との間に隙間が生じるので、骨の安定性を欠くのでギブス固定が1週間は必要です。 なお、鼻骨基部の幅寄せが必要ない場合は、外側の骨切りを程々行った上、術者が指で力を込めて骨折させます。すると基部の幅をほとんど変えずに、ハンプ摘出部の平らになったところは左右の骨が合わさり尖りが出せます。 また、鼻骨基部を一切触らず、ハンプを大きめに骨切りして摘出した後、残っている鼻骨に削りを入れ、且つ摘出パンプを加工して戻す方法も有効です(筆者が平成14年の日本美容外科学会で発表)。 これら手術で鼻の上半分が整う時、バランスを見て、鼻翼縮小(小鼻縮小)や鼻尖縮小(鼻尖形成)、鼻尖つり上げ術を併用した方が良いケースもあります。
わし鼻の程度が大きい人は、多少とも斜鼻の傾向です。鼻中隔軟骨も曲がっていて、鼻腔の通気にも左右差があるものです。 手術法は上述のハンプ摘出、鼻骨基部骨切り幅寄せをする際、曲がりを正すよう骨を移動させ、ギブス固定とします。時に軟骨移植を併用して補正することもあります。
鼻骨基部の骨の内側まで切って幅寄せした場合は、腫れが引いて不自然に見えなくなるのに最低2週間は考えて下さい。 内側まで切らず指で押して骨折、またはハンプ摘出・加工・挿入の手術なら、まだ回復は早いものです。 なお、ハンプをヤスリで削るだけの手術なら、術後テーピングをしっかり行うならば、1週間で割りと自然に見えるものです。
鼻骨基部骨切りし、幅寄せ、または骨折させ基部の骨を倒した時に、鼻腔内が狭くなり息がし難くなるのでは?と懸念する人がいましたが鼻腔内は解剖学的に鼻の穴の入り口から入れば大きく広がっており、広いところの上のところが少々狭くなっても支障はないようです。医学論文としてワシ鼻骨切り前後の通気のことを書いたものはないようです。